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「家で飼いネコと過ごしてほしい」。仕事もプライベートも、いつも一緒だった夫婦が選択した在宅介護


飼い猫と一緒に在宅介護


「毎朝起きると、まず夫が息をしているのを確認して、『おおやったぞー』ってなるんです。1日でも長く一緒にいたいと思って、何ならまた、目を覚まさないかと思っています」


がんと脳腫瘍の闘病を続けてきた誠さん。年末に救急で病院に運ばれてから、意識障害が続いている。そんな誠さんを、妻の崇子さんや家族が自宅で介護しはじめて2カ月。飼いネコの「みつこ」も、ベッドの上で見守っている。(取材:2023/02)


◆家と飼いネコが、夫の元気の源


前日までできていたうがいが次の日にはできなくなり、目を覚ますこともだんだんと少なくなっていく。病院に入院していると、少しずつできないことが増えていった。そんな誠さんの様子を見ているのがつらかったという崇子さん。


がんと脳腫瘍で意識のない夫を在宅介護する
がんと脳腫瘍で意識のない夫を飼い猫と一緒に在宅介護する


「覚悟しておいてください的なことを言われたとき、すぐに家で看ることを選択しました」。仕事もプライベートも、これまでずっと夫婦一緒だった。家での付きっきりの介護にも、迷いはなかった。


家にいて、みつこと戯れているのが好きだったという誠さん。入院中、意識がはっきりしているときは毎日電話を掛けてきて、みつこの様子を知りたがった。「それがたぶん、夫の元気の源なんでしょうね」


がんと脳腫瘍で意識のない夫を飼い猫と一緒に在宅介護する



◆「こいつだけは俺が守る」


誠さんは子どものころに飼っていた犬との別れが辛かった経験があり、崇子さんは猫アレルギー。もともと家で動物を飼うつもりはなかったという。


しかし、ある日娘がまだ小さかったみつこを連れ帰ってくる。はじめは娘が2階の自室でみつこの世話をしていたが、その娘も家を出ることに。


「二度と動物に情を移すことはしないと思っていたけど、こいつだけは守る」。残されたみつこを見かねて世話をし始めたのが、誠さんだった。

自分がこうだと思ったものには、ひたすら一生懸命になる誠さん。みつこにも愛情を注いだ。



がんと脳腫瘍で意識のないお父さんをベッドで見守る飼い猫


インターネットを調べて、ネコが腎臓を悪くしやすいことを知った誠さん。みつこが飲む水を家の中にいくつも置いて、それらを1日に何回も交換した。水が替わっていないと家族を怒ることも。「みつこファースト過ぎて、正直めんどくせえなって思うくらいでした(笑)」


「ネコが腎臓を悪くしないように頑張りすぎて、自分が腎臓を悪くした」。というのは、誠さんが病院で笑いを取る定番ネタだ。



◆場を和ませる存在


最初家に来たときは神経質だったみつこ。外から人が来ると隠れて出てこないこともあったが、息子夫婦に子どもが生まれて遊びに来るようになると、少しずつ距離を縮めていくようになり、家族以外の人の出入りも気にしなくなっていった。


誠さんを診るため家に医師や看護師が出入りしても、みつこはあまり動じない。「看護師さんたちもネコ好きが多くて、今や看護師さんたちとのコミュニケーションはみつこがとっています(笑)」



がんと脳腫瘍で意識のないお父さんを看る看護師とベッドで見守る飼い猫
がんと脳腫瘍で意識のないお父さんを看る看護師とベッドで見守る飼い猫


「夫がみつこにすごく愛情を注いだことで、今、みつこが看護師さんたちと私たち家族をつなぐ和やかな場をつくってくれて、助けられるというか、本当にありがたいですね」


誠さんが元気だった頃から一緒に寝ていることが多かったみつこ。今は誠さんの足元が定位置だ。ベッドの上でウトウトしながら、誠さんや家族の様子を見守っている。



 



がんと脳腫瘍で意識のないお父さんを看る看護師とベッドで見守る飼い猫
がんと脳腫瘍で意識のないお父さんをベッドで見守る猫にちゅーるをあげる孫の女の子
がんと脳腫瘍で意識のないお父さんを見守る猫にイタズラする男の子
がんと脳腫瘍で意識のないお父さんを家族が囲む




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